ファストウェイはじめて物語

それは1本の電話からはじまった

「NPO法人をつくりたいのですが・・・」

個人事務所で仕事をしていた私に、ある日こんな電話がかかってきました。NPO法人?当時、建設業の許可や入札参加資格の申請を中心に仕事をしていた私にとって、 それはまったく未知の世界、作成書類の見当すらつかない分野の相談でした。

1998年にNPO法が施行され、法人化する非営利団体が増えつつあったとはいえ、参考になる前例がなく、役所にも詳しい手引き書などない時代です。 とりあえず引き受けてみたものの、実は知らないので…とは言えません。

「引き受けたからには、なんとしてでも設立を成功させなければ!」

一本の電話からはじまり、必要に迫られて習得していったNPO設立のノウハウ・・・。あのときは、まさか自分がその道の専門になるとは思ってもいませんでした。

手続き代行丸ごとお任せでいいのか?

NPO法人化の手続きをはじめて5年、年を追うごとに相談件数も増え、 事務所の業務はしだいにNPO設立中心といった位置づけになっていました。慣れてしまえば手続きは簡単なもの!
「設立について分からない人には、一からやってあげるのが自分の仕事」と、そのときの私はすべてを請け負うことが当たり前と思っていました。

しかし、次から次へと新しいNPO法人を世に送り出す一方で、手続きを全部自分が引き受けてしまう危うさも感じていました。 事業計画や予算案は依頼者が具体的内容を決めなくとも、プロである自分の手を通せば容易に作成できてしまいます。
ただ問題は設立後、いかに事業を継続させていくかです。しっかりした目的や計画がないまま設立してもうまくいきません。 すぐに資金が底を突くなどして活動不能な状態に陥ってしまうのです。私は相談を受けながら、事業計画があやふやなままNPO法人をつくってしまう人が多いことに 不安を覚えはじめていました。

設立手続き代行からNPOのアドバイザーへ

「このままではいけない!設立手続きをすべて請け負ってしまうと、自立できないNPOを増やしてしまうだけだ」

せっかくつくったNPO法人の事業が次第に行き詰まるのを見て、いてもたってもいられなくなった私は、新たな道を歩む決心をしました。 そして、自らNPO法人を設立したのは2004年のこと。
面倒な手続きはすべてやってあげますよ」というスタンスから、「手続きは自分でやりましょう!」というスタンスに変え、 設立・運営に関する最大限の情報を安い会費で提供するという事業をはじめることにしたのです。

NPO法人の立ち上げを希望する団体はさまざまで、事業内容によっては普通の会社として設立するほうがいい場合があります。 また、法人化を急がなくても、任意団体として実績を積み、収益力を上げてから法人化するほうがいいケースも少なくありません。 私は、こういったアドバイスを気兼ねなく提供できる場をつくりたいと思いました。

NPO法人の設立は、以前と比べて楽になったとはいっても、時間がかかるしある程度の手間はかかります。 しかし、これをひとつ一つクリアしていく中で、自分たちが運営していく事業内容を理解・共有することが重要だと確信しています。 そしてこの基本を押さえる姿勢こそが事業の成功へとつながるのです。

「自ら考え行動するNPOを応援しよう!」
「つくるのが目的ではなく、継続して社会貢献できるNPOを世に送り出そう!」

こういった想いから私たち特定非営利活動法人ファストウェイは生まれました。(取材・執筆:物語ライティング)